SHINAGAWA TECHNICAL REPORT 品川技報

No. 56 (2013) 第56号 (2013年)

品川技報

目次

  • ・巻頭言
  • ・特別寄稿
  • ・報文
  • ・製品及び実績の紹介
  • ・関係会社製品紹介

巻頭言

回想

取締役 常務執行役員 野村 修

特別寄稿

東日本大震災 被災と復旧

飯田栄司

発熱性を付与させた 3 poise, 5 poiseモールドパウダーの効果

Dan LARSON、Asish K SINHA、Elizabeth BORGES、鈴木貴之、伊藤純哉

<要約>
United States Steel Corporation (U. S. Steel) は製品品質の改善の一環として、Shinagawa Advanced Materials Americas, Inc. (SAM Americas) より推奨された高粘度モールドパウダーの試験を行った。そして以下の 2 つの鋼種について品質改善に取り組んだ。
(a)自動車外板用極低炭素IF鋼(ULC)
(b)深絞り加工用ブリキ材 ASTM A624 (D&I)
表面塗装される自動車外板材と 2 ピース深絞り缶用の鋼種は、コイル中の介在物低減が要求される。1300℃での粘度が 3 poise(0.3Pa・s)の高粘度パウダー(以下 3 poise品)をIF鋼と他の極低炭素鋼で鋳造試験を実施した。 5 poise(0.5Pa・s)パウダー(以下 5 poise品)は深絞り缶用鋼種と他の低炭素鋼種、そして包晶反応領域以上の炭素鋼で試験を行った。0.3Pa・s品は 2 基の垂直曲げ型単ストランド連鋳機(第 1 連鋳機、第 2 連鋳機)と垂直曲げ型ツインモールド連鋳機で試験を実施した。 5 poise品は更に、垂直曲げ型単ストランド連鋳機(第 4 連鋳機)と湾曲型 2 ストランド連鋳機で試験を実施した。開発品である 3 poise品、5 poise品は共に要求される品質改善効果が認められ、第 1、第 2 連鋳機そしてツインモールド連鋳機にて常用使用されている。この品質改善効果は、さまざまな鋳造条件とモールド幅において認められた。

報文

転炉底吹き用羽口のスポーリング試験方法開発

飯田敦久、吉岡宏樹、橋本真聡、須藤実

<要約>
転炉底吹き用羽口の中で、Multi-hole plug(MHP)は細管集合型に分類される。使用後のMHPには稼働面に平行な亀裂が見られる場合があり、この亀裂から剥離損傷が起きると考えられる。MHPの更なる耐用性向上を実現するためには実機で見られる亀裂剥離の低減が必要であるが、従来の浸漬法などの試験方法では実機を再現する評価が困難であった。今回、MHPのスポーリング評価方法の検討を行い、一体構造物として評価可能な試験方法を開発した。

転炉底吹き用羽口のスポーリング試験方法開発
スライドプレートの脱炭機構の解析と耐面損傷性の改善

濱本直秀、森脇宏治、小形昌徳

<要約>
連続鋳造用のスライドプレートにはAl2O3-C材料が使用され、鋳造時にはその脱炭によってプレート面の損傷が生じる。したがって、プレートの耐用性向上のためには溶鋼による脱炭を抑制することが重要である。プレート材料の結合組織は金属添加物によって強化されている。SiとAlの添加がプレート材料と溶鋼との反応に与える影響を調査した。実験結果に基づいて開発した新材質は実機テストで良好な結果を得た。

高炉出銑孔の開孔速度に及ぼすマッド材特性、開孔設備の影響

飯田正和

<要約>
高炉出銑孔の開孔を記述する数値モデルを作成した。モデルによる計算は実際の開孔をよく再現し、マッド材のヤング率が高くなると開孔所要時間が増大すること、開孔設備の能力が低下すると開孔所要時間が増大すること、などを示すことができた。さらに、ある深度で突然開孔が不能になる状態を計算した結果、開孔不能はマッド材組織で説明することは困難であることがわかった。

CaOフリーアルミナ・マグネシア質プレキャストブロックの開発

西村雅史、佐々木久晴、西田茂史、難波誠

<要約>
アルミナ・マグネシア質キャスタブルは製鋼用取鍋の内張りとして広く使用されているが、近年耐火物への負荷が増加傾向にあり、更なる高耐用化が望まれている。しかし、一般的にはバインダーとしてアルミナセメントを使用したキャスタブルであり、CaO成分を含有するため耐食性等、性能向上には限界があった。そこで今回、ノンセメント化を検討し、耐食性・耐スポーリング性に優れたキャスタブルを新たに開発した。

球状粒を添加した超低水分タンディッシュ流し込み材

浅川幸治、湯元俊秀

<要約>
タンディッシュの損耗の一因に、母材流し込み材がコーティング材と一緒に薄く剥離する現象があり、これは母材へのスラグ浸透が原因と考えられる。スラグ浸透抑制方法には、母材の組成をシリカリッチにする化学的抑制と、母材を緻密化する物理的抑制の 2 種があげられる。しかし、耐食性を考慮すると現状以上のシリカ成分の増加は難しく、緻密化への低水分化もほぼ限界に達していた。そこで、新規に球状粒の活用を検討した結果、水量4.8%でも従来水量6.0%と同等の流動性を持つ超低水分流し込み材を開発することができた。開発品は気孔率を大幅に低下させることができるため、スラグ浸透抑制効果による寿命向上が期待できる。

製品及び実績の紹介

乾燥特性に優れるマッド材

新谷悠記、北村匡譜

<要約>
コールタールを使用したマッド材は、残留揮発分に起因する問題を引き起こしやすい。今回、粒度構成の最適化およびバインダーの変更によって、良好な揮発特性を有するマッド材を開発した。本開発品は従来のマッド材よりも短時間で硬化し、緻密な組織を形成する特長を有する。

鍋用高性能アルミナ-マグネシア質キャスタブル

西田茂史、西村雅史/p>

<要約>
低水分化を図った高性能アルミナ-マグネシア質流し込み材を開発した。開発品の特徴と実機使用結果について報告する。

低膨張シリカ質キャスタブル

東川夏海

<要約>
珪石れんがの代替品として、シリカ質キャスタブルCST-K57を開発した。CST-K57は珪石れんがと同様に優れた高温特性を示した。また、CST-K57の耐熱衝撃性は珪石れんがより優れていた。このことからCST-K57は各種工業炉における珪石質れんが使用部位への適用が可能であると考えられる。

速硬性熱間接着材

森弘之、森井浩明

<要約>
短時間で硬化し、接着性にも優れる熱間接着材を開発した。本接着材を取鍋用下部ノズルにパッキンを取り付ける際に使用した結果、取鍋移動中のパッキンの脱落もなく、また使用後の離型性にも優れ、良好な結果を得た。

高性能炉内熱間観察装置

笹井洋一、小橋尭文

<要約>
熱風炉やガラス窯など長期的な操業を行う炉では、炉内状況を確認するため熱間観察が実施されている。熱間観察装置は水冷式観察プローブ先端に取り付けられた小型CCDカメラにより炉内を撮影し、画像を記録するものである。今回、より手軽で鮮明な画像を取得できる観察装置を開発した。

関連会社製品紹介

帝国窯業株式会社「MgO-Cれんが施工用非水系特殊接着剤」

井神和生

<要約>
室温で硬化し、室温から1600℃まで強固な接着強度が得られる接着剤を開発した。非水系であるが低臭気で、機材の洗浄に水が使用できるなど、作業環境にやさしい。水分を嫌う耐火物の固定用に使用できる。

品川ファインセラミックス株式会社「窒化ケイ素/窒化ホウ素複合材料 SNB の特性と応用」

牧谷敦、吉川正博、佐々木王明

<要約>
当社のSNBは窒化ケイ素(Si3N4)に六方晶窒化ホウ素(h-BN)を添加することによりSi3N4が持つ優れた機械的特性とh-BNの持つ優れた耐熱衝撃性、機械加工性とを兼ね備えたセラミックスである。
本セラミックスはh-BN量を自由に変えることで、材料特性をコントロールできる事に加え、マシナブルであるという特長を生かして主に耐熱部材としての応用が進んでいる。

品川化成株式会社「化粧品用アロフェンパウダー」

鈴木宗、安藤光和、南園広志

<要約>
天然のアロフェンは、火山灰土壌中に広く存在する特有の粘土鉱物で、アルミナとシリカから構成されるSiO2/Al2O3 比が 1 ~ 2 の領域の非晶質粘土と定義されている。アロフェンは一般的に、 3 ~ 5 Åの細孔を持った直径35~50Åの中空球状態として存在する。アロフェンの性質についてはまだ明確になっていない所も多く、まだまだ可能性を秘めた物質である。アロフェンの最も著明な特性を大まかに述べると、水分子や有機酸、各種イオンなどの保持能力である。これらの特性は、アロフェン分子内の細孔径や分子間空隙、pHによる電荷変位が関係している。当社ではアロフェンを高純度で精製した粉末状アロフェン(製品名:SEKADO-P1, Allophosite)を製造しており従来用途では脱酸、脱色、脱水、抗生物質の発酵培地用添加剤など幅広く使われてきた。この度、新しい用途としてこの粉末状アロフェンが化粧品の下地クリームに採用されたので紹介する。

イソライト工業株式会社「Silplate®」

前田六郎、瀬戸口俊和

<要約>
Silplate®は、溶鋼プロセスのバックアップ材として使用可能な画期的な構造断熱材である。一般的な構造断熱材に対するSilplate®の特長は、
・高温耐熱性能
・低熱伝導性能
・優れた機械的強度
・寸法安定性
である。

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