SHINAGAWA TECHNICAL REPORT 品川技報

No. 57 (2014) 第57号 (2014年)

品川技報

目次

  • ・巻頭言
  • ・報文
  • ・製品及び実績の紹介
  • ・関係会社製品紹介

巻頭言

夢の耐火物

取締役 常務執行役員 吉野 良一

報文

溶鋼との反応によるスライドプレート用アルミナ-カーボン質材料の組織脆化

林煒 、 溝淵文彦、濱本直秀、森脇宏治

<要約>
連続鋳造用スライドプレート用のアルミナ-カーボン質耐火物を 3 種類の溶鋼(極低炭素アルミキルド鋼、低炭素アルミキルド鋼、極低炭素シリコンキルド鋼)に浸漬する実験を行った。いずれの鋼種の場合でも、耐火物浸漬部の表面にアルミナ層が生じており、その層の内側において、元々存在していたカーボンおよび一部のアルミナ粒が消失した脆化層が形成されていた。そのような組織の形成メカニズムとしては、耐火物の内部でアルミナとカーボンがAl︵g︶やCOのようなガスを発生する反応を起こし、それらのガスが溶鋼との界面でアルミナを生成させることが考えられた。極低炭素アルミキルド鋼の場合の脆化層は、最も深かった。それは、この鋼種のカーボン活量が小さいため、耐火物内でのアルミナとカーボン反応の駆動力が大きいこと、および生成したアルミナ表面層は緻密性が低いため、耐火物内のガスの溶鋼への拡散を防止できないことによるものと考えられた。

セメントロータリーキルン向けコーティング付着試験方法の改良

伊賀棒公一、古賀雅宏、井上一浩、小形昌徳

<要約>
セメントロータリーキルンではコーティング層の形成が耐火物の耐用に大きく影響する。侵食剤を連続的に投入・排出可能な回転ドラム侵食試験装置を用いてコーティング付着試験を行った結果、実炉と似た付着組織を再現できた。マグネシア・スピネル質れんが中のスピネル骨材はセメント成分と反応して液相を生じやすく、その結果、コーティングの付着を促進する。しかし、高温下でスピネルの分解だけでなくセメントクリンカーの部分溶融によって液相生成量が過剰となると、れんがの溶損が生じる。

高炉樋スラグライン材の耐食性評価方法の検討

中坊一也、安尾幸祐、飯田貴志、北村匡譜

<要約>
高炉主樋スラグライン用流し込み材ではアルミナ-炭化珪素-カーボン質の利用が主流であり、炭化珪素やカーボンなどの非酸化物原料が耐用性の向上に大きく寄与している。しかし、これらの原料は酸化の影響を受けやすいという特徴も持っており、使用時に酸化が起こる場合には材料本来の特性を発揮できない可能性もある。本研究では酸化の影響の異なる条件において侵食試験を行うことによって、材質の耐食性に対する酸化の影響を評価し、適正な試験方法を検討した。試験の結果と実炉使用時の結果を比較すると、アーク加熱の条件で実炉の結果と傾向が一致した。このことより、実炉使用時の気相酸化の影響は小さく、主樋スラグライン材の評価試験としてはアーク加熱による試験が適している。

浸漬ノズル ZrO2-C材質の耐食性評価方法の検討

新妻宏泰、森脇宏治、林  煒

<要約>
浸漬ノズルのパウダーライン部に使用されているZrO2︲C材質の耐食性は、高周波誘導炉で溶鋼とパウダースラグを用いて評価されている。しかし、試験中に鋼中の酸素濃度の増加に起因して鋼中の鉄やその他の成分が酸化し、パウダースラグの組成が容易に変化するため、正確な評価はできなくなるなどの問題がある。そこで、本報告では種々の侵食試験条件を検討し、鋼の代わりに銑鉄を使用する評価方法が適した方法であると判明した。

炭化ホウ素原料中の遊離炭素の定量分析方法

池上克重、延原誠二、内田茂樹

<要約>
炭化ホウ素原料の純度を決定するうえで不純物の遊離炭素の定量分析は重要である。JIS R 2015規格には湿式酸化分解-電量法を用いた遊離炭素の定量分析方法が規定されている。JIS規格にしたがって定量分析を行ったところ、概略の手順はJIS規格にしたがえるが、いくつかの点で精度を確保できないことがわかった。湿式酸化分解時の温度をJIS規格に依らず適切に設定すること、酸化分解で発生するCO, CO2ガスをすべてCO2ガスに変える工夫をすること、また、炭化ホウ素自身の分解を制御できる適切な原料粒度で分析を行うこと、その他の改善点を見出した。

製品及び実績の紹介

マッド材の最適化技術

北村匡譜

<要約>
高炉の操業に欠かせない耐火物であるマッド材は当社の主力製品のひとつである。数あるマッド材製品のなかから代表的な製品をいくつか取りあげ、その特徴を紹介する。また、マッド材の改善を支える独自の研究開発の取り組みについて紹介する。

珪石れんが用モルタル DIN適合MK-95D-7、低熱膨張性MK-95D-8…

佐川和貴、東川夏海

<要約>
本報では珪石れんが用モルタルについて紹介する。当社は延びに優れ作業負荷が少なく、施工体特性も良好な珪石質モルタルとして、MK︲95D︲7とMK︲95D︲8を有している。MK︲95D︲7はDIN 1089 Part 3を満たしたモルタルである。一方、MK︲95D︲8はやや多い不純物を含むが、MK︲95D︲7に比べ低い熱膨張を有しており、比較的短期間で行われる昇温の施工に適する。

RH脱ガス槽用大型一体物還流管

橋本則孝、西角敏昭

<要約>
目地が無い大型一体物構造のRH炉還流管を開発した。地金が侵入することにより鉄皮が赤熱するトラブルがなくなり、安定的な操業の達成に寄与している。

RH脱ガス槽用大型一体物還流管
耐摩耗性に優れるAl2O3-SiO2系れんが

森孝一郎、舛井博文

<要約>
配合原料および成形、焼成条件の工夫により、高強度で耐摩耗性に優れるAl2O3︲SiO2系れんがを種々開発している。開発当初にターゲットとした工業炉だけでなく、さまざまな用途に利用が可能である。これらのれんがの特徴と適用例を紹介する。

還元性雰囲気工業炉用C-SiC質れんが

冨谷尚士、小形昌徳、森孝一郎

<要約>
製鋼用アーク炉ではMgO︲C質れんがが広く使用されているが、合金鉄製造用のサブマージド・アーク炉ではカーボン・ブロックの使用が一般的である。一方、サブマージド・アーク炉と同じ技術による電気抵抗式灰溶融炉の場合は、C︲SiC質れんがが使用されている。サブマージド・アーク炉や電気抵抗式溶融炉は還元雰囲気下で連続的に操業されるので、非酸化物系材料(カーボン質、C︲SiC質)が酸化せずに良好に耐用する。C︲SiC質れんがは耐スラグ性に優れ、熱伝導率が高い特徴がある。さらにカーボン・ブロックよりも耐酸化性が良い。C︲SiC質れんがは還元雰囲気で操業する各種工業炉においてカーボン・ブロックに代えて使用できる可能性がある。

アルミニウム合金溶解炉用インダクター耐火物(割れないプレキャストブロック)

北中萌恵、難波 誠

<要約>
耐熱スポーリング性に優れたSiC質インダクターブロックCST︲S530を開発した。開発品は従来の高アルミナ質と比較して容積安定性に優れ、弾性率も大幅に低減されている。CST︲S530をアルミニウム合金溶解炉用インダクターブロックに適用することで大幅な寿命向上と安定耐用が期待できる。

関連会社製品紹介

Shinagawa Refractories Australasia Pty. Ltd.「耐アルカリ性に優れた次世代ショットクリート材(豪州市場向け)」

Nathan LEICHT and Mark HERRING

<要約>
豪州の耐火物市場においてショットクリート材は非鉄鋼産業、特に耐アルカリ性の要求が強いセメント産業や石灰産業で多く使用されている。Shinagawa Refractories Australasia(以下,SRA)は、耐アルカリ性に優れ、施工性が良好なショットクリート材 NOVACRETEⓇを開発した。

品川ファインセラミックス株式会社 「導電性α-サイアロンセラミックスの特性と応用」

牧谷敦、吉川正博、佐々木王明

<要約>
当社の導電性α︲サイアロン(SAN︲3)は絶縁体であるα︲サイアロンセラミックスに導電性粒子である窒化チタン(TiN)を微細に分散させた焼結体である。このセラミックスは高強度・高靭性材料で、耐摩耗性にも優れており、主に静電気対策を目的とした応用が進んでいる。

イソライト工業株式会社 「高性能耐火断熱ボードと生体溶解性ファイバ製品」

中島幸次、前田六郎

<要約>
弊社は独自の技術で高性能耐火断熱ボード(イソウール1260SIボード)と安全を考慮した生体溶解性ファイバ(イソウールBSSR)を開発した。1260SIボードは従来ボードと比べ断熱性が約 4 割改善されたことにより工業炉のさらなる省エネに寄与し、曲げ強さが約 2 倍となり取り扱い性が向上した。またBSSRは生体溶解性ファイバ(BSF/Bio Soluble Fiber)として具備すべき基準を十分に満足し、適用箇所は従来のセラミックファイバの一部代替だけでなく、建築物の防火材のほか家庭用品にまで広がっている。

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