SHINAGAWA TECHNICAL REPORT 品川技報

No. 61 (2018) 第61号 (2018年)

品川技報

目次

  • ・巻頭言
  • ・報文
  • ・製品及び実績の紹介
  • ・関係会社製品紹介

巻頭言

所感

取締役 常務執行役員   飯田栄司

報文

鋳片品質改善に対する連続鋳造用耐火物の取り組み

松長隆行,森脇宏治,飯田正和

<要約>
浸漬ノズルやガス吹き上ノズルなどの連続鋳造用耐火物は,鋳片品質に大きく影響を与える。本報では,モールド内溶鋼流動を改善する浸漬ノズルの適正な構造,介在物浮上に影響するガス吹き上ノズルの特性,ロングノズルのシール性向上などについて,鋳片品質改善へ向けた連続鋳造用耐火物の機能性向上効果や実機結果などの事例を報告する。これらの耐火物の適用により,鋳片品質の向上や耐火物寿命の向上を図ることが可能である。

使用後CaO-ZrO2-C質浸漬ノズルの微構造調査と付着抑制機構の推定

林煒,大川幸男

<要約>
実機のAlキルド鋼鋳造に使用されたCaO-ZrO2-C質浸漬ノズルの内孔体の微構造について調査を行った。内孔体のAl2O3-C部位に厚いAl2O3付着物層が生じたのに対して,CaO-ZrO2-C質(CZ-C)部位には付着が生じず,マクロ的な溶損も認められなかった。CZ-C稼動面は表面層と脱炭層から構成され,表面層に主にAl2O3-CaO相(マトリックス),ZrO2-CaO粒およびAl2O3-MgO粒が存在し,脱炭層はZrO2-CaO粒の間にAl2O3-CaO相が分布している微構造を示した。2つの層とも緻密であった。CZ-Cの付着抑制効果は,その稼動面が緻密で且つ溶鋼との濡れ性が良いことによると推定される。付着抑制効果が長時間維持できた理由は,表面層は見掛け粘度が高く溶鋼流れに流失し難いことにあると思われる。

初期凝固シェル緩冷却とモールド内適正抜熱を両立させた高塩基度化モールドパウダーによる鋳片割れ抑制

伊藤純哉,山下翔悟,岩本行正,片山大輔

<要約>
中炭素鋼や包晶鋼の連続鋳造では一般的に高塩基度モールドパウダー(塩基度CaO/SiO2=1.1~1.4)が適用されている。しかしながら,依然として鋳片縦割れの問題があり,モールドパウダーによる改善が要求されている。鋳片割れの起点となるメニスカス近傍での凝固シェル緩冷却化に着目し,新たに開発したスラグフィルムシミュレーション試験を活用して検討を行った結果,1.5以上の高塩基度組成が効果的であることを見出した。新たに開発した高塩基度モールドパウダーはスラグフィルム中の結晶層成長速度を速めてメニスカス近傍の緩冷却化を達成し,かつ結晶化温度を調整することで適切な凝固シェル厚みの確保が可能である。本技術は実鋳造において鋳片割れ抑制効果が確認され,現在は高速鋳造や高合金鋼など幅広い条件で活用されている。

MgO-C反応速度に対する気孔率の影響

土井菜保子,飯田正和,大川幸男

<要約>
高温下で生じるMgO-C反応は,MgO-Cれんがの損傷要因の一つであると考えられている。今回,MgO-C反応速度に対する気孔率の影響を実験的に調査した結果,MgO-C反応は試料の表面から進行し,高気孔率であるほど反応速度が大きくなることが判明した。また,反応途中で回収したサンプルの組織観察から,反応層/未反応層境界,即ち反応フロントが存在し,MgO-C反応に伴う重量減少は反応層で生じていると考えられる。反応フロント進行速度が気孔率により異なるモデルを構築して解析を行った結果,得られた値は過去の報告結果や反応厚み実測値と良く一致することが確認できた。

定形耐火物の破壊力学特性比較

吉川道徳,小宅民淳,飯田正和

<要約>
本報では亀裂進展長さと亀裂進展抵抗(応力拡大係数「KR」)の関係(R-曲線)に着目して数種の定形耐火物を評価した。その結果,MgO-C質とマグスピ質の比較ではR-曲線の比較から,MgO-C質よりマグスピ質の応力拡大係数が全ての領域で大きいため,亀裂発生抵抗性,亀裂進展抵抗共に大きいと推定される。以上から,マグスピ質の方が亀裂発生,亀裂進展し難い材質であることがわかった。スライドプレート用材質2種(Al2O3-C ①とAl2O3-C ②)の比較では,亀裂開始点(Δa=0)の応力拡大係数はAl2O3-C ②の方が大きく,Al2O3-C ②の方が亀裂の発生し難い材質であることがわかった。別途実施されたスポーリング試験によるとAl2O3-C ②の方が耐スポーリング性に優れ,この材質の熱衝撃破壊抵抗性の評価には「亀裂開始点の応力拡大係数」即ち亀裂発生抵抗性の方が有効な指標になる可能性があると考えられた。また,各材質ともフロンタルプロセスゾーンの直径は約6~7 mmと推定された。

マッド材におけるFe-Si3N4の添加効果

影山達也,田中大輔,梶谷昭仁

<要約>
長時間加熱したときの特性変化に着目し,マッド材におけるFe-Si3N4の添加効果について検討を行った。Fe-Si3N4を含むマッド材を還元雰囲気下1500 ℃で長時間加熱すると,Si3N4の分解反応によりβ-SiCを生成するが,このβ-SiCは原料としてあらかじめ添加しているSiCよりもマッド材の耐溶銑性を低下させないことがわかった。これは,β-SiCの生成と同時に酸窒化物も生成していることが原因であると推定された。また,Fe-Si3N4がSiCと比較して耐溶銑性に優れる理由は,Si3N4の分解反応にともない生成する酸窒化物の影響に加え,生成する窒素が,稼動面の気孔内圧を高めて溶銑による侵食を抑制している可能性が考えられた。

溶銑温度が主樋ML材の損耗速度に与える影響

森本喜久,安尾幸祐

<要約>
高炉主樋ML材において,出銑温度の上昇が損耗速度と材料特性に与える影響を調査した。1500 ℃の温度条件で行った侵食試験の結果と比べ1550 ℃では約2.9倍,1600 ℃では約5.5倍と大幅に損耗速度は増加した。また,一度1550 ℃以上の高温にさらされた場合,耐食性の低下が認められ,これは1500 ℃ではSiCのFree Cの酸化抑制作用があるが,1550 ℃以上ではSiCのFree Cの酸化抑制作用が失われること,またFree CとSiO2が系外へ散逸することによる組織のポーラス化が原因だと考えられた。実炉において1550 ℃以上の高温の出銑があると,主樋ML材の損耗が非常に大きくなり,さらに一度高温にさらされ耐食性が低下した部位が残存している間は,出銑温度が低下した後も損耗速度が大きい状態が継続することが示唆された。

吹き付け材の特性に及ぼすバインダー種類の影響

鈴木悠人,小松原清行

<要約>
乾式吹き付け材は簡便な補修方法として広く用いられているが,高耐用化の要望も強く,バインダーを主とした材料開発が行われている。一般的に用いられる珪酸塩,りん酸塩が吹き付け材の特性へ与える影響を調査した。その結果,りん酸塩の高い溶融性とシャモット骨材との反応性によって,優れた接着性を示すことが知見として得られた。

製品及び実績の紹介

新しいタンディッシュ材の開発

中坊一也,土井菜保子,西田茂史,飯田敦久

<要約>
連続鋳造タンディッシュのライニングでは,設備ごとにその構造,損傷形態に合わせて様々な材料が使用されている。今回,既存のタンディッシュ用耐火物とは異なった材料系の,高耐用で費用対効果に優れる製品を新規開発した。また,各種施工形態に対応する製品を取りそろえた。

セメントロータリーキルン焼成帯用クロムフリーれんが及び遷移帯用スピネルれんが

諏訪毅,山下恭平,戸田義大,小宅民淳

<要約>
セメントロータリーキルンの焼成帯用クロムフリーれんがELK-85AX,遷移帯用スピネルれんがSP-8L-3を開発した。ELK-85AXは結合組織の改善により高い熱間強度を示し,クリンカー摩耗損傷の低減を図った。SP-8L-3は使用原料の最適化により,コーティング付着性,応力緩和性,低熱伝導性を示した。このことから,セメントロータリーキルンにおいて,ELK-85AXは焼成帯,SP-8L-3は遷移帯へ適用することで安定耐用が可能と考えられる。

加熱炉向け軽量断熱キャスタブル

中坊一也,西田茂史

<要約>
収縮を抑制することで長期使用時の安定性を改善した材料を開発した。また,種々施工方法に対応する材料を揃えた。

転炉用底吹き羽口耐火物

金子詳平,柿原昌佳,冨谷尚士

<要約>
転炉の底吹き羽口用耐火物における最も重要な課題は,剥離損傷の抑制である。当社では破壊靱性の向上といった視点で高耐用な羽口耐火物を開発しており,各所で良好な結果が得られている。本報では,当社の最新の羽口耐火物とその実績について紹介する。

関係会社製品紹介

イソライト工業株式会社
「耐水性に優れた高強度マイクロポーラス系断熱材 LTC-A」

黒瀬晋也,末吉篤,末武伸介

<要約>
イソライト工業は,低熱伝導率で強度が高く,加工性と耐水性に優れた断熱材LTC-Aを開発,製品化した。LTC-Aは他のマイクロポーラス系断熱材と比較し,曲げ強さ5倍以上,圧縮強さ2倍以上となり,取り扱い性が向上し,複雑加工が可能で,強度が必要な組み付け部分に使用出来る。さらに結露や水蒸気に対する耐水性に優れることから,これまで使用が困難であった部位にも適用の可能性が広がっている。強度,耐水性を活かし,各種工業炉の内張りに採用され始めている。

株式会社セラテクノ
「高出銑比操業対応レジン系マッド材」

原真也,槇原崇

<要約>
当社明石工場は品川グループにおいてレジン系マッド材を大量生産している唯一の工場である。この度,従来のレジン系マッド材に比べて高耐用のマッド材を開発し,実炉における高出銑比操業の安定化に寄与できたので紹介する。

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