SHINAGAWA TECHNICAL REPORT 品川技報

No. 66 (2023) 第66号 (2023年)

品川技報

目次

  • ・巻頭言
  • ・報文
  • ・製品紹介

巻頭言

顧客から第一に選ばれる耐火物事業者を目指して

Gustavo Padilha  Presidente Shinagawa Refratários do Brasil Ltda

報文

電気炉製鋼における底吹き耐火物技術

石原英治

<要約>
炉底に設置した底吹きプラグ(マルチホールプラグ)から不活性ガス吹き込みにより鋼浴を攪拌する,いわゆる底吹きガス攪拌は,電気炉製鋼法の発展過程において導入された技術の1つに挙げられる。その導入期である1980年代後半には,既に転炉において一般化していた技術でもあり,多くの電気炉設備において試験的運 用が開始された。その結果,エネルギー原単位の削減,精錬時間の短縮,メタル歩留の改善などの操業効果が 確認された。一方,底吹きプラグの耐用回数,プラグ交換の困難さ,底吹き用耐火物と周辺システム含めたトータルコストに課題があり,その適用は限定的であった。その後,プラグ耐火物の改善,操業方法の最適化,施 工技術の確立により,相対的に導入効果の大きかったステンレス鋼や特殊鋼などの鋼種を溶製する電気炉において実用化された。カーボンニュートラル実現に向け,既に動き始めている様々な取り組みの中で,電気炉製鋼における新たな要求に対して,更に底吹きプラグの開発・改良が必要になることが予想される。

加熱炉用耐火物とセラミックファイバーにおける技術開発

小森 繁, 小松原清行, 末武伸介

<要約>
本報は,加熱炉に使用される当社グループの耐火物とセラミックファイバーの技術について述べている。吹 付プラスチック,および乾式吹付プラスチックの適用により施工負荷の軽減が期待できる。新開発のケミカル ボンドキャスタブルは高い耐スポーリング性と耐FeO性を示し,スキッド寿命の延長が可能である。断熱性と耐スケール性に優れる新開発のファイバー製品の適用により,熱損失の大幅な低減が期待できる。今後も,操業に応じた組合せの最適化や新材料の開発に継続して取り組んでいく。

マッド材の長時間加熱後の組織脆化抑制技術
-長時間加熱マッド材への窒化アルミニウム添加の影響-

山本悠雅, 影山達也

<要約>
窒化珪素鉄を窒化アルミニウムに置換したマッド材の長時間加熱後の特性調査を行った。窒化アルミニウムを多く含むマッド材は,窒化珪素鉄を多く含むマッド材で確認された著しい重量減少,多孔質化が抑制される傾向が確認された。窒化珪素鉄は長時間加熱されることで,窒化珪素に含まれる窒素を放散させる反応が起こる。一方で,窒化アルミニウムは試料外からのCOガスを還元し,マッド材中にカーボンを析出させる反応が生じたことに起因すると推測された。窒化珪素鉄から窒化アルミニウムに置換することは,長い深度を維持し,炉壁保護の役割を向上させる有効な手段であると考えられる。

高耐用塩基性スライドバルブプレート用材質の開発
SVR-FB7,SVR-FB8

濱本直秀, 馬場浩樹, 松長隆行, 堀内俊男

<要約>
溶損鋼種に対して使用されるスライドバルブ(SV)プレート用塩基性材質は,高い耐食性を持つ一方で加熱冷 却の繰り返し負荷に弱く,多くの場合は1ch交換で使用される。そこで塩基性材質の欠点を改善し,複数回使 用を可能とした高耐用塩基性材質SVR-FB7,8を開発した。新規開発材質は製鉄所で取鍋用プレートとして多 数回使用され、良好な結果を得た。

浸漬ノズル用CaO-ZrO2-C材料におけるZrC生成反応抑制の検討

林 煒, 三浦宏伸, 松長隆行, 堀内俊男

<要約>
実機使用において浸漬ノズルのCaO-ZrO2-C(CZ-C)内管材質には異常損傷が生じ,顕微鏡による組織観察では多量のZrC生成,顕著な組織脆化が認められる場合がある。CO分圧の低い場合でもZrC生成反応を抑制できる条件を見出す必要があると考え,Al2O3,MgO成分添加の影響を検討した。Ar雰囲気中加熱試験では,従来のCZ-C材質に比べてSpinel(5%)添加試料,特にSpinel+Al2O3)(各5%)添加試料はZrC生成量が顕著に小さかった。EPMA分析により,従来のCZ-C材質はCZ粒の間にZrCが孤立して存在する組織を呈したが,前述の両試料ではAl2O3-CaO系の低融点相が生成し,それはCZ, ZrO2およびZrC粒をコーティングし,また全体組織の緻密性を高めている。一方,溶鋼浸漬試験では,両試料は従来材と同様に高い耐アルミナ付着性を維持した。

新成分系発熱型フロントパウダーによる鋼品質の改善

伊藤純哉, 山﨑 聡

<要約>
鋼の連続鋳造の初期には鋳造安定化と品質向上のため,モールド内の潤滑と溶鋼表面の保温性を重視した発 熱型フロントパウダーが使用される場合が多い。しかし,鋼種や本体パウダーの特性から課題は未だに存在し,生産性を低下させていることからフロントパウダーの改良を行った。中炭素鋼用は高塩基度組成により鋳片の 緩冷却性能を向上させ,鋳片割れ抑制効果を発揮する。極低炭素鋼用においてはカーボンかつ酸化鉄を無添加 とすることによりカーボンピックアップ抑制効果を発揮する。超高粘度本体用に合わせてフロントパウダーも 超高粘度化し,混在時の特性ギャップを解消して鋼品質を維持する。これらの特徴ある発熱型フロントパウダーの適用は鋳造初期の生産性向上に期待ができる。

製品紹介

大型プレキャストブロックを用いた高炉樋の高耐用化と工期短縮

鈴木建司, 飯國恒之,田中 稔, 的野 淳

<要約>
高炉樋はオンラインで補修される事が一般的であり,工期短縮と省力化が望まれている。そこで,高炉溶銑樋への大型プレキャストブロックの適用を試みた。その結果,従来の現地流し込み施工と比較して,工期が約 1/4,作業時間が約1/5にまで短縮可能となり,大幅な工期短縮と省力化を達成した。また,大型プレキャストブロックに当社独自の高熱間強度化技術を適用したケミカルボンドキャスタブルを使用したことで,耐用が約1.8倍に向上し,施工頻度が減少,更なる省力化が可能となった。

不焼成マグネシア・クロム質れんが(SINTEX-3)

宮本大輔, 石原英治

<要約>
「カーボンニュートラル」の実現に向け,当社は,事業活動で消費される燃料の燃焼や電力の使用に伴うCO2 ガスの排出量を2030年までに50%削減(2013年度比)することに挑戦する。鉄鋼や各種窯炉向け塩基性耐火 物の代表であるマグネシアクロム質れんがはそのおよそ90%が製造工程で高温焼成される,いわゆる,焼成 れんがである。これに対し,不焼成マグクロれんが「SINTEX」は,元来,不焼成品であることから,製造工 程での燃料使用量が焼成品と比較して約1/9と少なく,直接的に環境負荷低減のメリットが得られる。この「SINTEX」は,古くは平炉の吊り天井や,非鉄製錬炉の内張材としての使用実績はあるが,現在では,その製造量は多くはない。そこで,その適用範囲の拡大を目的とし,新商品,「SINTEX-3」を開発した。マグクロれんがが使用されるRH下部槽での使用環境を想定し,ラボ評価を行ったところ,現行のダイレクトボンド品と同 等の耐熱スポーリング性や耐食性(耐FeO性)を示した。

CGLメッキ炉用耐火物の紹介

戸田義大

<要約>
CGL設備のメッキ炉は溶融する金属の種類によって操業条件は様々であり,各種条件に応じた耐火物を開発 している。特に操業条件の厳しいガルバリウムメッキ炉ではインダクター部の耐用が課題であり,主な停炉原因 はメタル中の金属Alとの反応による湯道の詰まりと熱スポーリングによって生じた亀裂からの湯漏れである。メタルとの反応性と耐スポーリング性の改善したインダクターブロック(CST-A6125,CST-S530)を使用した結果,良好な使用結果が得られた。

ファイバーマックス1600SFの紹介

(イソライト工業株式会社)岸川雄祐, 根本孝司, 寺田浩之

<要約>
セラミックファイバーは,省エネルギー,CO2排出削減など地球環境保護にとって欠くことのできない製品 であり,今後益々需要が高まると予想する。一方,製造する過程において副次的に生成する非繊維状粒子は脱 落によって鋼板疵の原因となるため,非繊維状粒子の低減技術が求められる。本報では,非繊維状粒子を低減したファイバーマックス1600SFについて紹介する。

半導体・FPD製造装置に活用されるファインセラミックス

(品川ファインセラミックス株式会社)吉川正博, 小坂正生, 藤原俊史, 津川賢介

<要約>
半導体やフラットパネルディスプレイ製造装置は,微細化・高集積化,および製品処理能力向上を目的として, 耐食性,耐熱性,剛性に優れるファインセラミックス部材の活用が進んでいる。本報告では,本装置分野で用いられる当社ファインセラミックスの材料特性と適用例について概説する。

CONTACT お問い合わせ

お名前
Eメールアドレス
電話番号
会社名
お問い合わせ項目
お問い合わせ内容

入力必須

お客様から寄せられる情報等について

個人情報保護方針」をご確認の上、ご記入ください