品川技報 第59号 (2016年)

品川技報

品川技報
第59号(2016年(平成28年))

目次

巻頭言

コークス炉小特集号発刊に寄せて

取締役 常務執行役員   金重 利彦

コークス炉小特集

日本におけるコークス製造の現状

飯田正和

<要約>

日本においてコークスのほとんどは高炉製銑法における鉄鉱石の還元剤として用いられており、コークス製造技術は高炉操業の要求を満たすように発達してきた。本報では高炉操業が要求コークスの特性とそれを満足するためのコークス製造技術の発展について述べ、コークス炉耐火物の損傷、環境問題への対応状況などについて概観した。

寄稿

常温、高温での圧縮応力付与時の珪石れんがの疲労破壊挙動

日野雄太

<要約>

珪石れんがの常温と高温における疲労破壊について調査した。その結果、珪石れんがの1470Kにおける疲労寿命は常温での疲労寿命に比較して大幅に優れることがわかった。高温における疲労寿命の延長メカニズムについて詳細に検討した結果、高温ではれんが内部に形成される微量な液相の存在が疲労破壊寿命の増加と関連性があると推定された。さらに液相と固相との濡れ性が高温での疲労破壊寿命に依存しており、両者の濡れ性が悪い場合には高温で疲労には優れると推定された。

コークス炉用耐火物の損傷

細原聖司

<要約>

我が国では1960年代から1970年代にかけて多くのコークス炉が建設された。当時、コークス炉の寿命は25年~30年と言われていたが、診断や補修技術の発達により、多くの炉が40年を超えて稼働している。本報では我が国におけるコークス炉耐火物の損傷機構、炉内状況の観察技術、補修技術の研究を概観した。

特集報文

コークス炉用珪石れんが

飯田正和、森孝一郎、谷口重生

<要約>

コークス炉の建設・改修用の珪石れんがC.SC、C.SCD、C.SCDD、および積替え補修用珪石れんがHRS、C.FS-98について述べた。C.SC、C.SCD、C.SCDDはそれぞれドイツ規格のKN、KD、KSに対応するもので多くの建設に使用されている。HRSは急加熱しても割れ難い積替え補修用れんがで、多くの実績がある。C.FS-98は常温からほとんど熱膨張しないれんがで、今後実績を積み重ねて行く製品である。

コークス炉炭化室炉壁で44年使用された珪石れんがの特徴

内田茂樹、池上克重

<要約>

日本で44年使用された当社の緻密質珪石れんがSCDの解析を行った。24年使用れんがの炭化室側にはクリストバライト粗粒が残っていたのに対して、44年では、炭化室側、燃焼室側等の部位に関係なく、クリストバライト粗粒が無くなり微粉化結合状態の微構造を示すとともに、ほぼすべてがトリジマイト結晶になっていた。また、トリジマイトの結晶成長も経年とともに進んでいたが、炭化室側、中間部、燃焼室側とも、試料採取部位により、結晶の大きさの差が大きい部位とその差が小さい部位とが確認された。さらに、化学組成、気孔率、圧縮強度などの経年変化の特徴も調べた。

コークス炉炭化室炉壁で8年使用された熱間補修用特殊珪石れんがの特徴

内田茂樹、池上克重

<要約>

日本で8年使用された当社の熱間補修用特殊珪石れんがHRSの解析を行った。炭化室側は未使用HRSの組織に近いが、非晶質シリカが減り、クリストバライトが増えた微構造であった。一方、燃焼室側は、炭化室側と同レベルのクリストバライト量だが、非晶質シリカがさらに減ってトリジマイトが増え、また、組織は粗粒の分解と微粉化及びそれら微粉の結合が始まりつつある状態であった。炭化室面に若干の面損傷があり、全体に、化学成分の外部からの侵入は少なく、高強度化、若干の熱膨張率増加の傾向があったが、引き続き使用可能と推定された。

コークス炉用の不定形耐火物とプレキャストブロック

東川夏海、西田茂史、飯田正和

<要約>

近年のコークス炉には、寿命の延長、コークスの増産、ガス漏出の低減など、多くの課題があり、それに対応するため不定形耐火物やプレキャストブロックの適用が適正化されてきた。本報では当社のコークス炉用不定形耐火物とプレキャストブロックについて、最近の日本におけるコークス炉の状況とともに述べる。

釉薬塗布焼成ブロックCST-A53の適用 ―コークス炉ドア整備の容易化

飯田正和、西口英邦、森孝一郎、那須洋一

<要約>

釉薬を塗布して焼成したコークス炉ドアブロックの有効性と長期安定性について、実験室評価と12年実窯で使用されたブロックの調査結果をもとに述べた。このブロックは低膨張で割れ難いCST-A53に最適組成の釉薬を塗布したもので、製造工程には多くの管理が必要である。本製品の適用によりドア整備における付着タールの除去が容易になり、コークス炉における限られた要員での高生産性操業の継続に寄与すると考えられる。

コークス乾式消火設備(CDQ)におけるれんがの損傷と最適材質

森孝一郎、舛井博文

<要約>

国内でCDQが稼動を開始して約40年が経過した。CDQは排熱回収の他、環境改善、コークス品質向上の効果が大きく、海外においてもさらに建設が進むものと思われる。当社では1976年以降、3社7所24基に納入した実績があり、CDQ用耐火物の材質設計、製造時の品質管理、損傷状況調査等を通してCDQの施工性、安定操業、長寿命化に貢献している。

一般報文

組織制御技術による転炉用MgO-Cれんがの改良

飯田敦久、柿原昌佳、須藤 実、多田秀徳

<要約>

当社はMgO-Cれんがに対して各種の組織制御技術を適用することで製品ラインナップの拡充を図っている。それにより、多様な要求特性に対してよりきめ細かな対応が可能となった。本報では開発してきたMgO-Cれんがにおける組織制御技術について示し、転炉の操業を考慮した上で各操業条件や部位に対する推奨材質を紹介する。

不焼成Al2O3-MgOれんが“ALTIMA”の組織強化による高耐食性化

土井菜保子、飯田敦久、冨谷尚士

<要約>

溶鋼鍋用不焼成Al2O3-MgOれんが“ALTIMA”の耐スラグ侵食性向上について検討した。その結果、ALTIMAの耐スラグ侵食性には受熱後のスピネル形成反応に伴う組織形成が重要な役割を果たすこと、また、組織形成には原料の粒度分布と成形体の充填構造が影響することが判明した。検討結果を基に開発した高耐用品の実炉テストにおいても良好な結果が得られている。

新型スライドゲート装置によるプレートれんが耐用向上

Jose C. D. PONTES Jr.、Douglas F. GALESI、Leonardo F. M. SOUZA、Carlos F. LEÃO、森井浩明、山本堅二、高田 敦、堀内俊男

<要約>

新しく開発した新型取鍋用スライドゲート装置(以下SST装置)は、耐火物消費量の低減、装置部品点数の低減、耐火物交換作業時間の短縮、作業者の耐火物交換作業負荷の低減といった長所を有している。熱応力解析に基づいた最適なプレート形状と最適なプレート固定方法を用いることでプレートれんが稼働面の亀裂発生を抑え、プレートれんがの長寿命化が可能となる。さらに、シリンダーの推力を利用した自動面圧負荷機構にしたことにより面圧解除および面圧負荷作業が非常に簡単な作業となった。このSST装置をArcelorMittal Tubarãoにて使用した結果、プレート原単位を大幅に低減できた。本稿ではArcelorMittal TubarãoでのSST装置使用結果を報告する。

高耐用ノンカーボン内管材浸漬ノズル

Altemar D. D. NASCIMENTO、Jose C. D. PONTES Jr.、Gabriel M. PIGATTI、Douglas F. GALESI、Leonardo F. M. D. SOUZA、Carlos F. LEÃO、中村 真、大川幸男、堀内俊男、 若江智暁

<要約>

浸漬ノズルのアルミナ付着防止は、その使用寿命の延長だけでなく鋼品質向上の上からも非常に重要である。浸漬ノズルの内管部に適用されるノンカーボン材質は、アルミナ付着防止に効果があることが知られており、その損傷を制御できるかどうかが効果の程度を大きく左右する。ここでは、不可避成分としてノンカーボン材質中に少量含まれているカーボン成分の影響について調査し、このカーボン成分がノンカーボン材質の付着防止効果を減じていることがわかった。この知見を基に、新しいノンカーボン材質を開発、実機テストで非常に良好な結果となった。