品川技報 第62号 (2019年)

品川技報

品川技報
第62号(2019年(平成31年))

目次

巻頭言

回想

取締役 常務執行役員   吉村裕次

特別寄稿

日本における過去半世紀の耐火物の開発動向の推移

小形昌徳

<要約>

本報は日本における過去半世紀の耐火物の開発動向の推移を解説する。その開発動向は大きく3つの時期に分けられ,第1期は耐火物の品質改良であり,第2期は製鋼プロセスの変化に対応するための品質そのものの転換であり,第3期は付加価値の追求であった。そして,研究開発のキーワードは原単位から環境へと変化した。現在,日本の耐火物業界が直面している課題として,労働生産性,原料リスク,耐火物原料の製造エネルギーがある。

報文

スライドバルブプレートの開発

濱本直秀,松長隆行,飯田正和

<要約>

スライドバルブ(SV)プレートは取鍋やタンディッシュで溶鋼の流量を制御するために使用される重要な耐火物である。安定した流量制御を行うためにSVプレートには高い品質が求められる。今回は多様な鋼種に対する適応性や長寿命化の要求に対応して開発された各種SVプレート材質について報告する。これらの材質と最適化されたSVプレート形状の組み合わせにより,安定鋳造と耐火物の高耐用化が可能となる。

転炉MHPの損傷形態の調査と高靭性化技術適用

柿原昌佳,藤吉亮磨,飯田敦久,吉岡宏樹

<要約>

転炉用底吹き羽口の一種であるMHP(Multi-hole plug)用MgO-Cれんがについて,実機使用後れんがの微構造解析などを行った結果,MHPの損傷に対し稼働面近傍の大きな温度勾配に起因する熱スポーリングが影響していることが判明した。当社で開発した高靭性化技術を適用した焼成含浸処理MHPは従来材質より高い破壊エネルギーを有しており,使用中の剥離が抑制され,実機において損傷速度の低減に効果が得られたので報告する。

Al2O3微粉が長時間加熱後のマッド材特性へ与える影響

田中大輔,影山達也,梶谷昭仁,山本悠雅

<要約>

Al2O3微粉が長時間加熱されたマッド材の特性に与える影響を調査したところ,Fe-Si3N4を使用していないSiC系では長時間加熱による特性変化,化学組成変化は小さく,マトリックス中のAl2O3微粉添加量に応じた耐溶銑性,耐スラグ性の変化が認められたのみであった。一方,Fe-Si3N4を使用したSi3N4系では長時間加熱によりSi3N4の分解反応にともなう見掛け気孔率の増大,強度の低下,β-SiC,およびSi2N2Oの生成が顕著に認められた。侵食試験の結果から,Si3N4から生成するSi2N2Oは耐溶銑性を向上させ,Al2O3微粉添加によりSi2N2OにAlが固溶し,マトリックスの耐溶銑性向上,スラグ浸潤抑制に寄与していると推定された。マッド材へのAl2O3微粉添加は耐食性向上に有効であり,長時間高温にさらされる炉内堆積基盤の耐用向上の観点からはAl2O3微粉添加は有効な手段であると考えられる。

アルミナ-スピネル質キャスタブルの焼成後残存膨張に与える添加剤の影響

太田幸佑,中坊一也,西田茂史

<要約>

アルミナ-スピネル質キャスタブルは容積安定性に優れることが知られている。しかし添加する分散剤の種類によっては大きく膨張する現象が認められた。これまでアルミナ-スピネル質の膨張はCaO・6Al2O3の生成量の増加によると考えられてきたが,ポリリン酸ナトリウムを添加すると,Ca3(PO4)2が生成して膨張することがわかった。

溶損鋼種に対する高耐用Al2O3-C質SVプレートの開発

尾下裕亮,松長隆行,森脇宏治

<要約>

連続鋳造用のスライドバルブ(SV)プレートには,一般的にAl2O3-C質の焼成品が使用される。酸素濃度が高い鋼種では,特に高い耐食性が求められ,耐食性を向上させる手法として,金属Alの添加が挙げられる。しかし,焼成時に生成するAl4C3やAlNの影響による水和問題があるため,金属Al多量添加のAl2O3-C質SVプレートでは,一般的に不焼成材質が使用される。しかし,不焼成材質は低温域での酸化の問題がある。今回,焼成条件が金属Al多量添加のAl2O3-C質SVプレートの特性に及ぼす影響を調査した。実験結果に基づいて開発した新材質は,同じ金属Al量の不焼成材質より良好な結果が得られた。

RH下部槽側壁用スピネル-カーボンれんが

冨谷尚士,伊賀棒公一,平山堅太郎

<要約>

RHやVODなどの減圧機能を有する二次精錬設備ではMgO-Cやマグクロなどの塩基性耐火物が広く使用されているが,RH下部槽においてMgO-Cは減圧,高温下でMgO-C反応を起こす。MgO-CはMgO-C反応にともなう組織脆化によって損傷が増大していると考えられる。種々検討した結果,耐MgO-C反応性に優れるSpinel-CはRH下部槽側壁用として優れた耐用を示す可能性が示唆された。

製品及び実績の紹介

ノンフッ素モールドパウダー

髙橋尚志,伊藤純哉

<要約>

連続鋳造用モールドパウダーは粘度,結晶化温度調整のためフッ素が添加されているが,環境面等からフッ素を含有しないノンフッ素モールドパウダーのニーズがある。低炭,極低炭,高炭鋼のスラブ鋳造や,ブルーム,ビレット,ビームブランク鋳造などの多くの用途でノンフッ素化が可能であり,一部で実用化されている。本報告では,フッ素の役割と問題点,ノンフッ素化手法について述べる。

汎用性に優れた高性能タンディッシュコーティング材SCOAT-M-56

鈴木悠人,小松原清行

<要約>

タンディッシュコーティング材の具備特性である施工性,乾燥性,解体性の向上を図りつつ,吹き付け施工とこてぬり施工を可能とした汎用性に優れるタンディッシュコーティング材SCOAT-M-56を開発した。

ポーラスプラグ用多孔質れんがの開発

尾形和信,籠 貴大

<要約>

気孔の微細化により耐食性を向上させた多孔質れんがHSP209を開発した。HSP209は従来材質と比べ約30%高い耐食性を示した。実機使用においても損耗速度が約30%改善し、耐用の向上が認められた。

セメントキルン焼成帯用耐脆化性クロムフリーれんがELK-12XL-1

諏訪  毅,小宅民淳

<要約>

セメントロータリーキルン焼成帯用クロムフリーれんがELK-12XL-1は易焼結性MgO原料を添加することで,耐浸潤性と耐脆化性が向上した。焼成帯では,外来成分の浸潤深さが厚くコーティング脱着による剥離厚の大きい剥離損傷やコーティング脱着に伴う温度変動により組織脆化が生じるが,ELK-12XL-1を使用することで安定耐用が可能と考えられる。

関係会社製品紹介

帝国窯業株式会社
「最近の無機塗料・無機接着剤製品紹介」

井神和生,小引篤次,池田憲司

<要約>

近年,あらゆる分野で製造技術の進歩,素材・材料の変化が著しい。それに伴い塗料や接着剤の性能に対する要求も多様化,高度化しつつある。本報文は現在製品を販売している顧客での使用例の紹介だが,既存製品の改良,新規製品の開発を行い,新たな用途についても積極的に挑戦していきたい。各方面からのお問い合わせ,ご提案をいただければ幸いである。

イソライト工業株式会社
「高耐熱性マイクロポーラス系断熱材の研究」

三宅 健,末吉 篤

<要約>

1400℃グレードの耐熱性,静止空気並みの低熱伝導率を持ち,加工性,耐水性に優れたマイクロポーラス系断熱材を紹介する。従来のマイクロポーラス系断熱材は,微細気孔を有することから熱伝導率が低く断熱性に優れる。しかし,高温下ではシリカの結晶化,焼結が進行し気孔が消失するため,耐熱温度は1100℃前後と低く,活用範囲が未だ限定的である。高耐熱性マイクロポーラス系断熱材の開発により,加熱面側での使用が可能となり,熱効率の向上が可能と考えられる。

品川ファインセラミックス株式会社
「窒化ケイ素/窒化ホウ素複合セラミックスの耐食性改善とアトマイズノズルへの適用」

大塚展浩,牧谷 敦

<要約>

当社は,アトマイズノズルとして,窒化珪素(Si3N4)と窒化ホウ素(h-BN)の複合セラミックス(SNB)の適用を提案している。SNBは,h-BN(以下,BNと称す)に由来する優れた耐熱衝撃性を有し,混合比率を変えることで特性を自由にコントロールすることができる。 このSNBにジルコニア(ZrO2)を添加することで,金属に対する耐食性が向上し,アトマイズノズルとして使用時に発生する溶損を低減することが可能になる。また,ジルコニアに変えて窒化物Xを使用した場合,ジルコニア添加時と同等の耐食性を示す上,アトマイズノズル使用時にノズルの下端部(溶融金属の出口部分)に金属が付着し発生する「つらら」を低減させる効果が期待できる。