品川技報 第60号 (2017年)

品川技報

品川技報
第60号(2017年(平成29年))

目次

巻頭言

品川技報第60号の発刊に寄せて

取締役 常務執行役員   斎藤 敬治

特別寄稿

電気炉操業技術の変遷と今後の課題

JFE条鋼株式会社   小松喜美

<要約>

本報は以下の構成となっている。まず電気炉が誕生した時代背景、次に多くの先人達による独創的な電気炉開発の歴史と技術用語の解説、最後に電炉業界に期待される項目や業界連携の重要性について述べる。

報文

EAF用耐火物の最近の適用結果

鳥越淳志、冨谷尚士、藤吉亮磨、国井 仁

<要約>

当社で開発したEAF用耐火物のうち、側壁用高耐食性れんがHIDEN、EBT用チューブ、底吹き用ノズル、出鋼孔用スライドバルブSGV、ABB式直流電気炉用炉底電極れんが、バックライニング用高耐消化性れんがについて、特徴と代表的な事例を述べる。これら耐火物の適用により、耐火物寿命の延長や操業の効率化を図ることが可能である。

電気炉用不定形耐火物について

西田茂史、田中大輔、小松原清行

<要約>

近年の電気炉においては、鋼品質向上にともなう操業条件の過酷化、スクラップの低品位化などにともない、使用される不定形耐火物やプレキャストブロックの改善が進められてきた。本報では、電気炉に使用される当社の不定形耐火物とプレキャストブロックを取り上げ、それらの特徴について述べる。

高破壊靭性MgO-Cれんがの適用による転炉装入壁の損傷速度低減

藤吉亮磨、飯田敦久、鳥越淳志、吉岡宏樹

<要約>

転炉装入壁のスクラップ装入による損耗について、実験室でのスクラップ落下衝撃試験と実炉テストで検討した。それらの結果より、実炉で起こるれんがの損傷はスクラップ衝突による破壊と亀裂の伸展および連結によって生じており、機械的衝撃に強い高破壊靭性MgO-Cれんがの適用が有効であると結論された。

塩基性プレート材質の耐スポーリング性改善

溝淵文彦、濱本直秀、森脇宏治

<要約>

溶損鋼種用プレート材質として適用されることが多いMgO-C材質は、耐食性が高い一方で耐スポーリング性が低いという欠点がある。耐スポーリング性の向上には、スピネルなどの低膨張性原料を配合することが効果的であるが、その添加量の増加に伴って耐スポーリング性が向上する反面、耐食性は低下してしまう。これに対して、スピネルの配合粒度を粗粒側に調整することで、高耐食性でありながら耐スポーリング性を向上させた材質を開発した。

無予熱ロングノズルの高寿命化

新妻宏泰、吉川道徳、国井 仁、井上慎祐、森脇宏治、中村 真

<要約>

無予熱用ロングノズルには、鋳造初期に大きな熱衝撃がかかるため高い耐熱スポーリング性が要求される。今回、耐熱スポーリング性の高いシリカ含有原料を含まず高耐食性のアルミナ-カーボン本体材料と炭素原料を含まず低熱伝導性の内管材料とを組み合わせた無予熱用ロングノズルを検討した。低熱伝導性の内管材料は断熱層として働くため、熱衝撃の低減効果を期待できる。この無予熱用ロングノズルの熱衝撃低減効果を有限要素法により確認、実機での良好な使用結果を得たので報告する。

CFD解析と水モデル試験を活用した浸漬ノズルの設計

新妻宏泰、森脇宏治、西尾奏恵

<要約>

CFD計算と水モデル試験を活用して、浸漬ノズル吐出孔周囲のアルミナ付着抑制を目的とした浸漬ノズルの新規吐出孔構造2形状を開発した。底部山型+ホームベース型形状は吐出孔柱部から吐出孔下部への付着に対して抑制効果が、また台形断面吐出孔形状は、吐出孔上部への付着に対して抑制効果が期待できる。さらに、モールド短辺付近のメニスカスへの熱供給の向上を目的とし、吐出孔角度の最適化と内管へ段差構造を導入した形状を実機試用し、良好な結果を得た。

モールドパウダーの結晶化特性評価

岩本行正

<要約>

示差熱分析法(DTA)により、75種類のモールドパウダーの固体ガラスの加熱時の結晶化と溶融温度、溶融スラグから冷却時の結晶化を測定し、モールドパウダーの結晶化挙動について基本的な特性評価を行った。その結果、溶融時の粘度が低いほど固体ガラスの加熱時に析出する結晶化の開始温度が低いこと、低塩基度パウダーより結晶化しやすい高塩基度パウダーの方が再結晶化でも結晶化しやすいこと、過冷却度と発熱量には正の相関性があることを明らかにした。

拘束条件下で加熱された取鍋用流し込み材の品質特性

中坊一也、西田茂史

<要約>

取鍋用流し込み材として主に使用されるアルミナ-マグネシア材質は高温でのスピネル生成反応にともなって大きな残存膨張を示し、組織が多孔質となることが知られている。本研究では実炉に近い二軸拘束状態での加熱の影響を調査した。その結果、拘束下での加熱による緻密化の進行が確認できた。特に高温において大幅な強度の増大が認められ、実機使用時には非拘束加熱による評価から見積もられるよりも稼働面と背面側との間に大きな強度ギャップが生じていることが示唆された。

繰り返し加熱が高炉樋材の特性に与える影響

飯國恒之、田中大輔、北村匡譜

<要約>

高炉主樋用スラグライン材の特性への繰り返し加熱・冷却の影響、および添加カーボン原料種による影響の違いを調査した。その結果、繰り返し加熱・冷却の影響を受けると、Mulliteの生成をともなう焼結が進行するが、焼結の程度は添加カーボン原料種によって異なり、ピッチ添加材は焼結が進みにくいことがわかった。またカーボンブラック添加材の耐食性は、繰り返し加熱・冷却後に大きく低下した。これは繰り返し加熱・冷却による気孔径拡大のため、スラグが浸潤しやすくなったことが原因と推定された。

セメントロータリーキルン用塩基性れんがの機械的特性の改善

山下恭平、諏訪 毅、伊賀棒公一、小宅民淳

<要約>

セメントロータリーキルンは回転炉であり、内張りれんがはシェルの円周方向の変形や軸方向の動きなどに伴う複雑な機械的応力を繰り返し受けるため、剥離損傷を生じやすい。そのため、れんがの機械的応力に対する抵抗性を改善することはれんがの耐用性向上に重要である。本報告では、当社セメントロータリーキルン用塩基性れんがについて、従来の評価項目に加え、特に熱機械的特性に注目した結果と、その使用実績について述べる。

製品および実績紹介

取鍋用クロムフリースリットプラグの開発

向田吉光、籠 貴大、浅川幸治

<要約>

製鋼の二次精錬で使用される取鍋用ガス吹きプラグでは、バブリングの信頼性の面から、多孔質れんがを用いたポーラスプラグが広く使用されている。取鍋用ガス吹きプラグは、その使用過程において通気回復を目的に酸素洗浄される場合が多いため、高耐食性を必要とする。当社ではスリットプラグ用キャスタブルに酸化クロムを添加し高耐食性を付与しているが、環境面ではクロムフリーの強い顧客ニーズがあった。そこで今回、キャスタブルの緻密化を図ることにより、従来品と同等の耐食性を示すクロムフリースリットプラグを開発した。

タンディッシュ用新型スライドバルブ装置

山本堅二、高田 敦

<要約>

タンディッシュ用スライドバルブ装置において、従来の流量制御機能および浸漬ノズル迅速交換機能に加えて、浸漬ノズル旋回機能を備えた次世代型のスライドバルブ装置を開発した。それにより、鋳造中に浸漬ノズル吐出口方向を変更することでモールド内に旋回流を発生させることが可能となり、電磁撹拌装置と同様に鋼品質の向上が期待される。

非鉄精錬炉用不焼成Al2O3-Cr2O3-MgOれんが

戸田義大、森 孝一郎、諏訪 毅

<要約>

非鉄金属精錬炉向けの新規材質として開発した不焼成Al2O3-Cr2O3-MgOれんがを報告する。非鉄精錬炉でマグクロれんがが従来から広く使用されているが、当材質はマグクロれんがよりも優れた耐食性と耐浸潤性を示す。各炉のさらなる長期耐用化と、耐火物損傷に起因するトラブルの低減に寄与すると考えられる。

技術資料

非酸化物系耐火物の熱伝導率測定へのレーザーフラッシュ(LF)法の適用と課題

有馬修平、藤野真一、内田茂樹

<要約>

非酸化物系耐火物の熱伝導率測定に使用されるJIS R 2251-3熱流法の代替を意図して、LF法の検討を行ったので報告する。多くの種類の非酸化物系耐火物を比較試験した結果、LF法は熱流法を代替できることが示唆できた。今後はさらにいろいろな非酸化物系耐火物の熱伝導率をLF法によって測定し、LF法の適用範囲を決めることで規格化を図っていきたい。

関係会社製品紹介

品川ファインセラミックス株式会社
「窒化ケイ素/窒化ホウ素複合セラミックスのアトマイズノズルへの適用」

牧谷 敦、佐々木王明

<要約>

当社は、アトマイズノズル用材料として、窒化ケイ素(Si3N4)と窒化ホウ素(h-BN)の複合セラミックス(SNB)を提案している。SNBは、h-BN(以下BN)に由来する優れた耐熱衝撃性を有し、混合比率を変えることで特性を自由にコントロールすることができる。さらに粒子径50nmの超微細BNを適用すると、耐熱衝撃性がさらに向上し、少ない添加量でも高い耐熱衝撃性を維持することができる。BN添加量の減量はSNBの耐食性改善に繋がり、高耐用性アトマイズノズルの供給が可能になる。

イソライト工業株式会社
「RCFフリーの不定形繊維質断熱材(タッピング材及びコート材)」

末吉 篤、根本大輔

<要約>

RCF規制の対象とならないRCFフリーの不定形繊維質断熱材であるタッピング材とコート材を開発した。実施工したところ、これらの製品の施工性は従来品と同等であった。また、断熱キャスタブルを本タッピング材に変えることで断熱性が改善されることが示された。本コート材は繊維質断熱材と同等の加熱収縮率に調整することで剥離を低減することができた。本コート材を施工することで繊維質断熱材の寿命延長を図ることが可能である。