SHINAGAWA TECHNICAL REPORT 品川技報

No. 50 (2007) 第50号 (2007年)

品川技報

目次

  • ・巻頭言
  • ・見出し
  • ・報文
  • ・製品及び実績の紹介
  • ・関係会社製品紹介

巻頭言

品川技報No.50によせて(雑感)

常務取締役 竹端 美視

見出し

新製鉄法の開発

株式会社神戸製鋼所 徳田耕司,小林 勲

<要約>
新しい製鉄プロセスlTmk3は、粉鉱石と炭材から短時間に粒鉄を製造するプロセスである。シンプルでCO2の発生量が少なく環境にやさしい製鉄プロセスであり、また製品粒鉄は高密度、高純度など製鋼用原料として優れた性質を持っている。 米国のパイロットプラントでの実験操業を終え、現在世界各地で商業機の計画が進められている。

微粒子の液中凝集・分散特性の評価と制御

国立大学法人東京農業大学 神谷秀博,飯島志行

<要約>
さまざまな工学分野において、液中での微粒子凝集・分散現象の評価と制御は重要な基盤的科学・技術である。本レビューでは、最初に、予め調製された微粒子の表面処理方法、例えば、高分子分散剤吸着やシランカップリング剤やポリマーグラフト鎖縮合反応法を紹介する。この種のプロセスでは、コロイドプローブAFM法は、粒子間の表面相互作用を評価し、表面改質による懸濁液中微粒子の凝集・分散現象変化を解析するのに非常に有効である。次に、直径100nm未満のナノ粒子を液中分散させるときのナノ粒子特有の難しさについて検討する。 さらに、金属イオンと界面活性剤との錯体を粒子原料として利用する、ナノ粒子合成過程で併行して分散現象制御を試みる新規分散法について概観する。

報文

転炉絞り部ライニングの新規構造“逆傾斜積み”

三木 隆,佐藤三男,内田茂樹,須藤 実

<要約>
転炉絞り部れんがの脱落は操業時の補修を必要とし、また、時として、炉寿命を律速することがある。本研究では、絞り部れんがの脱落を防止するために、絞り部のライニング構造を有限要素法を用いた構造解析によって検討した。 解析にあたり、材料特性データ、構造解析用モデル、境界条件データを適切に設定することが、精度の高い解析結果を得るために必要であった。その結果、絞り部のライニング構造と絞り部れんがに生じる応力及びれんが挙動とが密接に関連することがわかった。また、大きな応力、れんが間隙間の生成要因を明らかにし、それら知見をもとに、新規構造の“逆傾斜積み”構造を提案することができた。実機テストにより、逆傾斜部分のれんがの脱落はなく、新規構造の効果が確認できた。

スピネル含有樋材の長期使用における劣化損傷について

影山達也,野上尚洋,北村匡譜,飯田貴志

<要約>
高炉主樋メタルライン材はAl2O3-SiC-C質流し込み材が使用されているが、更なる高耐食性の要望から、スピネルを含有したAl2O3-SiC-C質流し込み材が現在主に使用されている。しかし、スピネルを含有したAl2O3-SiC-C質流し込み材は、主樋において母材として長期間使用された場合、スピネル添加の影響と考えられる劣化損傷が大きくなるという問題がある。スピネル添加の影響と考えられる劣化損傷について調査した結果、スピネル粒子からMgOが拡散し、SiCの酸化促進、低融物の生成、2次スピネルの生成等を引き起こしていることが劣化損傷の要因になっている可能性があることがわかった。

マッド材における超微粉添加効果

影山達也,北村匡譜,田中大輔

<要約>
マッド材は微粉構成の比率が大きい耐火物である。微粉原料は材料のマトリックスを構成しているため、その特性はマッド材の品質を左右する。本研究では、いくつかの超微粉原料に着目して試験を行い、マッド材における超微粉添加効果について様々な知見を得ることができた。

Al2O3-SiO2質キャスタブルにおける膨張原料の添加効果

難波 誠,佐々木久晴,山地浩之,瀧川 勝

<要約>
タンディッシュ内張り材用の流し込み材は、一般的にAl2O3-SiO2質の材質が適用されている。流し込み材の開発にあたっては、亀裂と剥離の双方の抑制が重要となる。実機で観察すると、乾燥後亀裂を起点として亀裂が発生、伸展していることが確認され、亀裂抑制手法として乾燥後亀裂の抑制が重要である。一般的に、乾燥後亀裂の抑制手法としては施工水分量の低減が指向されるが、タンディッシュの乾燥時の最高温度は800℃~1200℃であることから、今回、膨張原料の活用により、1000℃加熱後の収縮抑制に着目した乾燥後亀裂の抑制について検討し、品質、その他の特性への影響について調査を行った。

高Al電磁鋼板用モールドパウダー”SIPSシリーズ”の開発

尾本智昭,鈴木貴之,小形裕文

<要約>
一般的な鋼種と比較して、鋼中Al濃度の高い電磁鋼板鋼種においては、鋳造時の鋼中Alとパウダースラグ中SiO2の反応が大きい。このため、モールドパウダーの特性が大きく変化し、ブレークアウトや生産性の低下といった問題の一因となっていた。今回、電磁鋼板用として開発した新規モールドパウダーにより、溶融層厚みの安定化やブレークアウトの防止など安定操業の達成、さらには、多連鋳化を可能とし、生産性の向上にも大きく貢献した。

MgO安定化ZrO2-C材の溶鋼浸透抑制効果および実機使用例

飯田栄司,金丸公三,林 煒(火へんに韋),松長隆行

<要約>
ZrO2-C材料は高い耐食性を持つため、連続鋳造用浸漬ノズルに広く使用されており、この材料の主原料であるZrO2原料には、一般的にCaO安定化ZrO2が用いられている。しかし、このCaO安定化ZrO2を用いたZrO2-C材料は、使用中に溶鋼浸潤や脆化が生じ、磨耗損傷する場合がある。そのため、ZrO2-C材料の溶鋼に対する耐磨耗性向上は重要な課題である。溶鋼浸潤の要因について調査した結果、溶鋼浸潤はZrCの生成が大きく関与しており、このZrC生成の抑制にはMgO安定化ZrO2を使用することが効果的であることを確認した。この結果に基づいて、MgO安定化ZrO2を使用したZrO2-C材を内管部に適用した浸漬ノズルが、実機使用で溶鋼浸潤や磨耗損傷に対して良好な結果を得た。

製品及び実績の紹介

取鍋用不焼成Al2O3-MgOれんが “ALTIMA”

後藤哲也,飯田栄司,多田秀徳,冨谷尚士

<要約>
近年高品位鋼の需要の高まりと共に取鍋ライニングへの負荷が増大している。従来取鍋メタルライン部にはハイアルミナれんがやカーボン含有系耐火物が使用されているが、耐食性や熱ロス等の問題を有している。またアルミナ-マグネシア質などのキャスタブルライニングは、耐食性、熱ロスの点では優れているが、施工用の設備や型枠が必要であり、爆裂防止の観点から慎重な乾燥、昇温が必要である。これらの問題を解決すべく、当社は不焼成アルミナ-マグネシア質れんが“ALTIMA”を開発した。本報告では“ALTIMA”の概要について紹介する。

取鍋用不焼成Al2O3-MgOれんが “ALTIMA”
環境対応型炭素含有れんが(ECONOSシリーズ)

多田秀徳,冨谷尚士,吉田昌弘

<要約>
環境対応型炭素含有れんが(ECONOSシリーズ)は、炉の予熱時に発生する臭気が非常に少ない、省エネルギーの効果が得られる等の優れた特性を有している。その結果、これらの材質は、溶鋼鍋、混銑車を中心にその適用が拡大している。

発熱材HOTMEL(ホットメル)シリーズ

尾本智昭,岩本行正

<要約>
金属シリコンの酸化発熱反応によって短時間に強力に発熱する発熱材「HOTMEL」を開発した。HOTMELは溶銑樋のノロ溶解、転炉焼付材への熱供給、タンディッシュの溶鋼温度補償等に使用されている。

高出銑用レジン系マッド材の開発

中村良介,Phil White,影山達也,北村匡譜

<要約>
豪州の各高炉メーカーにおいては、安全衛生上の観点からレジン系マッド材が一般的に使用されており、SRAはその供給責任を長年にわたって果たしてきた。更なるレジン系マッド材の高性能化を図るべく、配合および製造技術の両面から総合的な検討を実施し、高操業度の高炉においても優れた深度維持性能を有する、長時間出銑可能なマッド材を開発した。新たなマッド材は豪州ブルースコープ・スチール社において良好に使用され、安定操業に寄与している。

ガス化溶融炉用不定形耐火物

山地浩之,松原健一

<要約>
地球環境問題への関心の高まりに伴い、廃棄物の焼却から溶融までの一環処理技術としてガス化溶融システムが開発・実用化されてきた。各炉の運転条件により様々な耐火物が使用されており、耐火物の安定した耐用性が長期運転のための最重要課題となっている。当社では各種灰溶融炉も含め、耐火物材質とエンジニアリングの両面から、様々な重要課題に応えるべく、日々取り組んでいる。本報では、各種ガス化溶融炉における代表的な不定形耐火物について紹介する。

関係会社製品紹介

品川企業株式会社「大型仮組み品の製作工程」

京江啓二,澤 敏朗

<要約>
当社では以前より各種の大型品について加工・組合わせ作業を行っており、今回、その一端を紹介する。

Shinagawa Refractories Australasia Pty. Ltd.「乾式吹付け用SIPMシステムの開発」

Ron McKew,James Tyler,中村良介

<要約>
吹付け施工法は、補修期間の短縮や施工コスト削減という面で有利な方法であり、各種高温工業炉の耐火物施工法として広く使用されている。当社は、吹付法の欠点である、粉塵やリバウンドロス発生を最小限に抑制する新しい吹付けシステムを開発した。新システムの概要および本システムの実炉使用における優位性について述べる。

株式会社セラテクノ「転炉れんが膨張代用吹付け塗装設備」

横木英治,玉田一美,須广 章

<要約>
築炉時の膨張代設置作業を省略できるMgO-Cれんがへの膨張代用ロボット吹付け塗装設備の導入について紹介する。

帝国窯業株式会社「炉壁・鉄皮保護材ウォールガード」

森 弘之

<要約>
当社が開発したウォールガードは、ゴミ焼却炉炉壁表面へのクリンカー付着防止や灰溶融炉鉄皮部材の酸化防止などに優れた性能を発揮する不定形耐火物製の特殊な保護材料です。

Shinagawa Advanced Materials Americas, Inc.

斎藤敬治

<要約>
2006年7月、品川グループで三番目のモールドパウダー生産拠点が米国オハイオ州に発足した。新会社SAM Americas, Inc(旧名FMP, Inc.)は、品川グループの技術をベースとした高品質モールドパウダーを米国、カナダの鉄鋼メーカーに納入しているが、今後は品川グループの世界的ビジネス展開の一翼として南米、ヨーロッパへも展開していきたい。SAM Americas, Incは「顧客満足の追求」を方針としてベストを尽くしていく所存である。

品川化成株式会社「オゾン分解剤の開発」

若杉勝廣,三星敏雄,南園広志,平井猛行

<要約>
オゾンは、その強い酸化力から、水の消毒、揮発性有機化合物の分解などに用いられているが、人の健康や地球規模で環境に悪影響を与えるものでもある。それゆえ、大気中にオゾン処理ガスを排出する前に、オゾンを分解する必要がある。当社は、1974年よりオゾン分解剤としてSEKADO-KRを供給してきた。しかし、オゾン活用技術の進歩に伴い、強い触媒能が要望されており、今回、応えるべく新しい分解触媒を開発した。本文では、新しいタイプの分解触媒について述べる。

イソライト工業株式会社「重金属吸着材“アドセラ”製品紹介」

大塚 正,岸川暁寿

<要約>
近年、ヒ素、六価クロム、鉛などの重金属による土壌汚染、地下水汚染が社会問題になっている。汚染の範囲は、大規模な工業地帯の開発や都市部での生産活動に伴い、より広範囲に、より身近なところまで環境汚染が拡大している。日本板硝子㈱と当社が共同で、これら環境汚染の対策技術として重金属吸着材「アドセラ」を開発したのでこれを紹介する。重金属汚染に対し、掘削除去以外の方法で、低コストで、実用性の高い環境対策技術である。

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